FC2ブログ

母さんの絵本

小学校に上がる直前くらいだったかな。
母さんが自作の絵本を作ってプレゼントをしてくれた。

きれいな色つきの厚紙に、ひらがなと絵を交互に書いたオリジナルの物語。

お話は、アオと同じくらいの年齢の女の子が主人公。
その子は風船が大好き。
あるときかわいい真っ赤な風船をもらったのだけど、
うっかり手を離してしまって、風船は空の彼方へ。
女の子は泣いてしまう。

…普通の絵本なら、このあと何か素敵な奇跡が起こって風船が返ってきてハッピーエンド、となりそうなものだけど。
母さんの絵本は違った。

泣きながら眠った女の子は夢を見る。
それは昔飼っていたセキセイインコが出てくる夢。
そこでインコは、女の子の赤い風船をくわえている。

「飛ばした風船はボクがもらったよ」

夢でちょっとほっこりするけれど、逃したものは二度と戻らないのよ、というお話。
現実はそんなに都合よくはいかないのよ、と伝えたかったらしい(じっさいそう言っていた)。

アオは風船が好きでよくもらってた。
でも手から離して飛ばしてしまっては泣いて母さんを困らせていた。
だからその戒めもあったのかな。

幼いアオは少し寂しい気持ちになりながら、そんなもんか…と思ったけど。

でもね。
今なら思うの。
小さい子供に見せるお話は、ハッピーエンドでいい。
ハッピーエンドがいい。

現実はそんな都合よくいかないなんてことは、わざわざ教えなくたってイヤでも学ぶもの。

落ち込んだりへこんだりするときに立ち直る力をくれるのは、
「現実なんてそんなもん」って物語じゃなくて、
ハッピーエンドで心が喜んだ瞬間の気持ち。

たくさんの「温かい思い出」がある人ほど、
何かあってももう一度って立ち上がる力を持っている。
その思い出は、言い換えれば「記憶」。
絵本もそのひとつ。

アオは強くそう思う。