芽キャベツ

アオは少食ではあったけど、好き嫌いはそんなには激しくなかった、と思う。

覚えているのは、芽キャベツ。

アオの父さんは妙なところが凝り性で、
家でステーキを焼くとなれば鉄の皿をガス台で熱して、ガロニや他のおかず、汁物、ご飯も全部用意が済んでから
鉄皿の上で肉を焼いて木の皿に乗せてテーブルに運んだ。

今時のファミレスによくある、熱々ジュージュー音を立てているステーキが提供される、あんなイメージね。

ステーキ自体はもちろん好きだったのだけど、苦手だったのは決まって鉄皿に一緒に載せられていた芽キャベツ。
キャベツのすんごい小さいやつね。
必ず毎回、載ってた。
苦くて、好きになれなかった。

あの芽キャベツって、何が良いんだろうね?
色合いだけかな。
流行りだったのかな、今ほとんど見かけること、ないよね?

大人になったら芽キャベツなんか絶対に買わない!って、心の中で思ってた。

今食べたら、美味しく思えるのかな…?

食が細い

アオは小さい頃、食が細かった。

量を食べないだけじゃない。
胃が小さいとかいうよりも、食道そのものが細かったんじゃないか、
と思い当たったのは、大人になってからのこと。

というのも、アオは水の一気飲みもできなかった。
夏に暑い中を遊び回ったら、喉が乾くじゃない?
子供がみんな揃って、グラスの水を飲み干す風景。
そんな中に混じって、アオは一口飲んでは息をつき、もう一口飲んでは息をつき。

なんでみんなみたいにゴクゴク飲めないんだろ?って思っていたけど、
つまりは食道が細いから水が入って来るときに空気を吐き出す隙間が作れなかったんじゃないかって思うの。

同じ理由で、水で飲み下す錠剤やカプセルも飲めなかった。
無理に飲もうとすると呼吸ができなくて溺れた状態になっちゃってたのね。

結局これは第二次成長期…小学校卒業くらいまで続いたかな。

アオの家には車がなかったから乗り物耐性も弱くて。
長距離バスに乗るには酔い止めが欠かせなかったのだけど、これも飲むのに一苦労でね。

今、少食なお子さんのいるお母さん、食が細いのは実はそんな理由かも?
少食でも元気なら、成長期には体格とともに食道も太くなるから心配いらないよ。
あくまで個人的経験に基づく話だけどね。

お弁当

幼稚園の行事につきものなのが、お弁当とおやつ。
でもアオはほぼ、おやつを食べられなかった。
それは、食べるのが遅かったから。

ふだんの食事も遅かった。
それが遠足や運動会ともなれば、母さんもお弁当に気合いを入れてくれるし、
けどそうなるとふだんよりさらに量が増えてなかなか食べ終わらない、という。

やせっぽっちのアオを心配して、母さんは毎日少しでもたくさん食べるようにと頑張ってくれていた。

食べきれない時は
「ごちそうさまでした、残してごめんなさい」
が決められた挨拶。

夕飯が入らなくなるからと、ふだんはおやつも食べさせてもらえないことが多かった。
だから幼稚園の行事の時のお弁当も、めったに食べられないおやつ食べたさに必死でご飯を食べた。

友達がおやつも終わって遊び始めているのを横目に、ようやくおやつを口にする…
と、集合時間になっておしまい。

いつもそんな感じ。

ずいぶん後になって母さんが、
「行事の時くらい、お弁当を残してもおやつを食べさせてあげれば良かったね」
とつぶやいていた。

やせっぽっちのアオの健康を、真面目すぎるくらいに考えてくれていたんだよね。
おかげで、アオは健康そのものだったよ。

食が細いのは、第二次成長期に入るまで続いた。

その話はまた次回。

運動会

幼稚園の頃の記憶は、大半が後から親に聞いたことを覚えてるっていうだけで、自分のリアルな記憶として残ってることはあんまりない。

その数少ないリアルな記憶…と言ってもかなり断片的だけど…は、年長さんの時の運動会。

年長さんの時の先生は、若いけどわりと気の強そうな人だった。
優しい感じじゃあなかったね。

正直、好かれてはいなかったと思う。

そんな年長クラスでの運動会。
どんなプログラムだったかは覚えてない。
まぁ、かけっこがビリだったのは間違いないけど。

そして最後の最後に組体操的なものがあった。
練習の時はなかなかうまくいかなかったのよね。
それが、当日はまぁうまく決まった…んだと思う。

終わって席に戻ったら、先生たちがみんなしてボロボロ泣いていた。
感動した、って。
アオの担任も泣いていた。

へえ、そんなに大成功だったんだ。

やった本人はさほど感動もなく。
先生たちの様子を見てふうん、と思ったくらい。

子供なんて、そんなものかもね。

あ、運動会といえばお弁当。
母さんが作ってくれたお弁当を食べるのに必死で、でも少食な上に食べるのも遅かったから、おやつにたどり着けたことなんかなかった。

その話は、また次回。

手モデルデビュー

父さんの仕事は幼児教育関連の本の編集だった。
あるとき、父さんがアオにモデルになってと頼んできた。

それはハサミの持ち方についての記事。
ハサミの正しい持ち方と、最近(当時のね)の子供に多い間違った持ち方の例を、それぞれ写真に撮りたかったらしい。
それも、子供の手で。

というわけで、アオに白羽の矢が立ったわけ←大げさな(笑)

その、最近多い間違った持ち方とは。
刃先を自分の方に向ける持ち方。
それでどうやってモノを切るんだろう?と思った。

カメラはもちろんアナログの時代。
撮ってもその場で見ることはできない。

しばらく経ってから実際に本に載った自分の手の写真を見て、なんだか嬉しかったのを覚えてるよ。

顔も写らない、手だけの写真だってもね。

そんなアオの物語、まだまだ続きます。
ゆるりとお付き合い下さいな。